与論島唯一の養蜂家であるHoneying Projectさんの作る蜂蜜、おひさまのしずく

松井さんの目白大学入学のきっかけから卒業後、沖縄の地域おこし協力隊までのエピソードはインタビュー前半をご覧下さい。

松井さんのインタビュー後半は、沖縄の地域おこし協力隊から与論島の地域おこし協力隊、養蜂家になったエピソードをお伺いしていきます。

Honeying Projectの松井さんの養蜂家になったエピソード

目白大学卒業生、松井直樹さんのインタビュー後半

松井さんの販売なさっている蜂蜜 おひさまのしずく

インタビュワー(以下イ):養蜂は副業と仰っていたじゃないですか?なぜ、養蜂だったんですか?

松井直樹さん(以下松井さん):私の沖縄の地域おこし協力隊の前の世代だった方が、北海道から沖縄の協力隊になったんですけど、この人が養蜂をやってたんですよ。その方の蜂の巣箱を、私が沖縄に来てちょうど1年たったときの3月の頭くらいに巣箱を見せてもらったんですね。「ああ、養蜂ってこういう感じなんだ」って思って。

当時、私は蜂なんて大嫌いだったので、「いやもう、蜂はないな」って思って、そのときはなんとも思わなかったんですよ。その人が3月の中旬ぐらいに採蜜機(分離した蜂蜜内に、ミツバチやミツロウ、幼虫が入っている場合があるので取り除くために蜂蜜をこす道具)を県庁に持ってきて、会議室で採蜜をやることになりました。それを見ていろいろ蜂蜜のことを勉強するようになったころ、沖縄県庁で2年前の4月1日にコロナが出ました。

時間が出来たときにYouTubeから養蜂家へ

実際に松井さんが蜂蜜を採取するときの画像

松井さん:コロナが出てから在宅勤務の時間が2か月ぐらい出来たんですよ。その期間に…地域おこし協力隊が在宅勤務でやることが少なくなり、蜂のこと気になっていたので、ひたすらYouTubeで蜂のことを調べてたんですよ。ありとあらゆる動画を見て、「蜂蜜ってすげえな」って思ったんですね。体にこんなに成分があるし、地球的に見ても、ミツバチがいなくなったら地球上の植物がなくなっちゃうっていわれるくらい。地球に優しいことをするなら良いなと思って、私もやってみようかなと思ったんですよ。

在宅勤務があけて6月に入り、養蜂屋さんに行っていろいろ話を聞いて、「ちょっと私もやってみたいんですけど」って言ってみたら、「沖縄でやるんだったら蜂売らないよ」って言われたんですよ。沖縄って国土が狭い分、蜂がいっぱいすぎるんですね。養蜂屋さんがいっぱいいるんですよ。花の数が限られているのに蜂がいっぱいいるから、餌場の取り合いなんですね。

餌場の取り合いになるとどうなるかというと、蜂の巣箱に伝染病が蔓延しちゃうんですね。沖縄の蜂はセイヨウミツバチという外来種で、ニホンミツバチではないので、伝染病が蔓延しちゃって蜜の取り合いになってしまいます。養蜂業界としては新規参入を許したくないわけですよ。だから、沖縄でやるんだったら売らないよって言われたので、奥さんが与論にいたので、与論で養蜂やってる人っているのかなと思って調べたら、昔やってた人はいたんですけど、当時やってる人はいなかったんですね。それならチャンスかもって思って、このタイミングでやるしかないって思って、与論でやるんでくださいってやりました。

イ:お話をお聞きすると、養蜂をやるための松井さんの流れに途中からなってますね。

松井さん:当然、OJTなんてあるわけないんで、全部YouTubeからの知識だけで見様見真似でやるだけです。蜂の巣箱をもらって、あとはもう蜂との戦いです。それで、1年経って6月に蜂を飼って、12月ぐらいに9kgぐらい蜂蜜が取れたんですよ。それを師匠のところに持っていったら、「これはすごいのできたね」と師匠のところでも買ってくれて、売ってくれるみたいな話になったんですよ。じゃあ、本格的にやってみようかなとなり、去年の3月のうちに開業届を出して、本格的に蜂蜜販売業として開業しましょうということで始めました。

当時、与論で養蜂やってる人がいるならできなかったと思う。与論って小さな島なんで、限られたものしかお土産品がないんですよ。新しいお土産品になるならやってみようって。

イ:販路から開拓するのは大事ですよね。個人的に松井さんの活動をYouTubeにしたら、絶対に次に養蜂家の卵の人が見るんじゃないかっていうのは感じます。

松井さん:沖縄でやるんじゃなかったらいいかな。今は関東なんかでもいろいろやってますもんね。清瀬なんて役場の屋上で置いてるしね。あれをね、与論でやりたいんですよ。

※東京都清瀬市では自治体職員の方が市役所の屋上で養蜂をなさっています。

イ:いいですよね。自治体が行っていると1つのブランディングとして発信しやすいですもんね。

松井さん:そう。そのままふるさと納税にできるんで。それをやらせてくれっていうのを、地域おこし協力隊の面接の試験があったときに、町長がいたので「お願いします」って言ったんですけど、「どうかな、これからできるかな」って感じですね。

今は島の中で蜂蜜として売ってるのはうちしかいないのでいろいろ勉強して発信していかないと。

今やろうと思っていることは、蜂は毎日動いてるので、蜂の様子を動画に撮ってそれを30秒くらいの動画であげようかなと。それは全然できますから。蜂のメンテナンスって週1回ぐらいしないといけないんですよ。

養蜂をやるには、蜂との適度な大人の距離感が必要!?

実際の蜂と蜂蜜の様子

イ:蜂のメンテナンスって週1回なんですね!

松井さん:そう、蜂にしてみたら、自分の家の中を毎日見られて、レイアウトも替えられたら、蜂にとってはストレスでしかない。ストレスが高まっちゃうと巣箱に近づいただけで刺しにくるやつが出てくるんですよ。なので、ストレスを与えないようにするには、週1回くらいがベストらしいです。

イ:たまに来る、あの人間なんだ?ぐらいのペースが良いんですね。

松井さん:そうそうそう。で、働き蜂の寿命は50日なんで、蜂1匹に対して5回くらい会えれば記憶にも残らないし、刺されることもない。これが毎日行っちゃうと、蜂はストレスしかないんで、「こいつは敵だ」って思っちゃうんですよ。

イ:では、蜂と慣れるというよりは知らないままのほうがいいんですね。

松井さん:そうですね、はい。適度な距離感が必要です。

イ:大人の距離感ですね。

松井さん:大人の距離感です。でもね、養蜂業者って蜂からしてみたらひどい話で、自分たちが貯めた食料を定期的に抜かれるわけですから。そう目の前で。蜂にとっちゃ死活問題ですよね。それを横から泥棒してそれを売ってるだけっていう、そういう人間ですからね。ひどい話ですよ。

イ:そう考えると、完全に適度な距離感ですよね。

松井さん:そうです、適度な距離感です。

イ:多分、それを知らない消費者の方っていっぱいいると思うんですよ

松井さん:ああ、いっぱいいると思いますよ。

蜂蜜を採取するときの苦労話

蜂蜜を採取するときに蜂をどかすときの動作を教えて下さっている松井さん

イ:蜂蜜を採取するときの映像だと周りに蜂がいても取るイメージですが、蜂蜜を取るときの大変さをお聞かせ頂けますか?

松井さん:最初こそ防護服を着て、手袋をしてってやってんたんですけど、今はもう手袋とかしてたら仕事がはかどらないんで、素手でやるんですよ。当然刺されますよ、ブスッと。刺されますけど、素手で。

松井さん:防護服は暑くて無理です。冬場は全然いいんですけど、夏場なんて炎天下の中でやるので、1つの巣を見るのに30分くらいかかるんですよ。今7個くらい抱えているので、1・2個だったら防護服でも耐えられるくらいだったんですけど…。あ、それでも1回熱中症でぶっ倒れたことあった…

イ:与論は暑いですもんね。

松井さん:いやほんとに。東京と違って与論の日差しってすごいんですよ。なので、夏とかは生死がかかるくらいに暑いですね。熱中症対策っていう対策はないので、1つの巣箱が終わるタイミングでたっぷりペットボトルの水を飲むことくらいしかない。

蜂は死んだ蜂のフェロモンがストレスになる

イ:蜂にとってストレスになるもの、例えば臭いなどはあるんですか?

松井さん:一番ストレスになるのは、蜂の巣箱を開けてメンテナンスすると、どうしても挟まれちゃう蜂がいるんですよ。その死んだ蜂のフェロモンっていうのが、蜂にとっては闘争本能しか…攻撃の本能をくすぐられるんですね。だから1匹でも蜂が潰されちゃうと、その瞬間に一気に攻撃モードに蜂が変わっていって…

巣箱の前では速い動きがダメなんですよ。速い動きをすると、敵だと思って蜂が群がってきて刺してくるんですよ。だから、蜂の前ではゆっくりとスローモーションで。

イ:そこにも適度な距離感が出てくるわけですね。

松井さん:自分が刺されないためにゆっくりスローモーションになる。暑いときでもスローモーションで。

蜂になるべくストレスをかけないようにやっていくんですけど、当然蜂だって採蜜のときって蜂の巣の板みたいな蓋がついてるやつが採蜜できるんですけど、その蓋がついてるでもメンテナンスをする働き蜂がいるんでしょ。それをどかすんですけど、そこから先は取られたくない蜂と取りたい人間との生死をかけた戦いなわけですよ。

イ:最後の戦いが行われるわけですね

松井さん:これはもう大変な戦いですよ。必死にくらいついてくる蜂を、煙をかけたりブラシではらったりするんですけど、熾烈な戦いですよ。

イ:それも蜂を殺さないようにしないといけないし。

松井さん:殺さないように、刺されないように、必死の戦いですよ。

イ:よく映像などで蜂にかける煙は、蜂に害はないんですか?

松井さん:無いです。燻煙器で私なんかは新聞紙とかを燃やしたりして煙を出すんですけど、蜂は煙を感じると、蜂はフェロモンで会話をしてるんですけど、煙がかかるとフェロモンが遮断されるので会話ができなくなるんですよ。そうなると蜂自体が山火事だって思って警戒モードになるんですよ。おとなしくなるので、その性質を使って煙をかけておとなしくしたところで、板を取って中をチェックしたりする。最後、採蜜のときは煙をいっぱいかけて、活発な蜂を抑えてブラシで巣箱に落とす。

イ:松井さんから攻撃をされるときのことをお聞かせ下さい。

松井さん:刺すときは手とかに乗った瞬間に針を打つ。蜂も一発針入れたら死んじゃうんで…技ですよね。蜂の50日の寿命のなかで役割が決まってるんですね。なので、刺しに行く蜂は決まってるんですね。そいつらになるべく合わないように合わないようにって…

今後について、松井さんに養蜂の展望をお伺いいたしました。

SDGsのカードゲームのファシリテーターでもある、松井さんの養蜂の展望

松井さん:蜂の巣箱の数を増やしていきたいというのもあるんですけど、実は蜂って今から(2月下旬)の時期がすごい重要で、今は1つの巣箱のなかに女王蜂がいて、働き蜂が何十万っているんですけど、春先に新しい女王をつくるんですね。これを分蜂(ぶんぽう)っていうんですけど、この分蜂をミスしてしまうと、私にとっては大損害なんです。

新しい女王をつくって、女王が巣の半分の蜂を連れて行ってしまうんです。よく春先とかに、去年も札幌であったんですけど、蜂がブレーキに入ってニュースになったりします。あれが分蜂で新しい女王ができて、巣箱にいる蜂を持っていっちゃうっていう現象なんですけど、それをされないために、今の時期、週1回巣箱を見て、新しい卵ができてないかって確認するんです。

これをミスをして見逃しちゃうと、新しい女王ができて蜂を持ってかれちゃうんです。蜂を持ってかれるってことはこっちにとっては蜂蜜が取れなくなっちゃうんで、大損害なんですよ。

イ:新しい領主が外に出来ちゃうわけですね。

松井さん:そうです、そうです。

イ:新しい場所に女王候補を移動させて住まわせるのは難しいんですか?

松井さん:そうです。分峰させないために、新しい卵を見つけて…だいたい新しい女王の卵って5・6個できるんですけど、その1個だけを残してほかを全部潰すんですよ。1個だけを残して、生まれるギリギリまで大きくなったところで、箱ごと…3箱ぐらい…3つの板があるんですけど、板を3つくらい新しい箱に強制的に入れちゃうんですよ。強制分蜂っていうんですけど、それをすると、新しい女王蜂の卵がかえって女王蜂になります➡そこに働き蜂がいます➡新しい巣になりますっていう形になる。それが定着すればもう完成なんです。

それを強制的に…新しい卵をまず見つけなきゃいけないんです。それがこれからの季節(2月下旬)で、もうすでに生まれてたんですよ、先週帰ったら。2つくらいは強制分蜂させたんですけど、あと4箱くらいは強制分蜂をこれからさせないといけないんです。それをまず成功させて、うまく増やしていくっていうことができればっていうのがこれからの展望の1つです。

次は今までは週末養蜂でしたけど、今後与論に行く形になるので、与論行ってからなんですけど、今新しくやりたいなっていうのが、観光客に採蜜の体験をしてもらいたいなと思ってます。

一番は、いわゆる私が売っている蜂蜜っていうのは、巣箱のなかで蜂たちが糖度が高くなったから蓋をした、要するに糖度の高い蜂蜜です。それは当然この味(蜂蜜の味)がします。美味しいです。だけど、蜂たちが花から蜜をとってきましたって蜜が箱の中にある。それを実際になめてもらう。そのなめた味と蓋のついた蜂蜜の違いっていう、味の見比べをしてもらうっていう経験をこれからしてもらいたいなと。

イ:最高ですね。

松井さん:それをちょっとこれからやっていきたいなと。まあただ、与論島は観光客が少なく、与論の観光客は海が目当てなので、なかなか陸のそういったものって目を付ける人はいないんですけど、そういったところもやっていきたいなと思っていて。SDGsのカードゲームのファシリテーターを持っているので、SDGsの一環として、そういう形でうまくできればなと。

また、せっかくいい蜂蜜を作っているので、逆に目白大学に…短大のところにお菓子つくる学科があるじゃないですか?

自分のところの蜂蜜でななにかお菓子を作ってとお願いしたいんですよ。もしできるんだったら、大学の屋上の巣箱を置かせてよみたいな、そんなんもできたらなと思うんですけどね。

イ:学校での養蜂、すごいブランドになりますよね。

松井さん:おもしろいですよね。新宿キャンパスの屋上に巣箱置いて、そこで取れた蜂蜜で生徒たちがお菓子を作って、それを学祭で売ったら一番売れるんじゃないかなって。そういうのもやれたらいいなって。新宿はそんなに花ないかもしれないけど、でも公園もあるからな…あそこらへんは住宅街なんで、住宅街だと花を植えてる人がいたりするじゃないですか。その花も蜜になるものがあったりするんで。

東京の蜜が取れるのは間違いないなと。それでお菓子を作って売ったらいいんじゃないかななんて思うんですけどね。そのお手伝いができればなと思うんですけど。春先だったら…まだ東京は寒いからあれか(インタビュー当時は2月でした)…オオバコとかクローバーとかが咲かないと。クローバーとかでも全然蜜とか取れるんで。

イ:養蜂コンサルタントの松井さんになるわけですね?

松井さん:ああ、したいですね。

松井さん、インタビューにご協力下さり、ありがとうございました。最後に、松井さんと蜂の共同で制作された蜂蜜をご紹介いたします。

おひさまのしずく紹介

おひさまのしずくのパッケージ

与論産の蜂蜜である「おひさまのしずく」。

インタビュアーが頂いたときの味わいはパッションフルーツなどの南国の果実の風味が口に広がり、その後にしっかりとした甘さを感じました。後味はさっぱりとしていて、お菓子の材料や、パンに付けたり、酸味のあるコーヒーに入れたりしても相性抜群です。

蜂蜜の採取時期にもよっても味わいが変わるらしいので、ぜひ皆様もよろしければ一度、お手に取ってはいかがでしょうか?

商品は現在、与論島内の11カ所で販売されております。または下記でもネット販売されておりますので、よろしければご覧下さい。

https://oceanline.thebase.in/items/50226053