目白大学卒業生対談 2008年度卒 社会情報学科 高橋啓一さんと人間福祉学科 平賀祐芽さん 横關昌弘さん 後半

目白大学の同級生同士、高橋啓一さんと平賀祐芽さんと横關昌弘さんの対談です。後半は高橋さんが小田急鉄道に就職して大変だったところからスタートです。鉄道がお好きな方やあまり知らない人も多い内容だと思いますので、ぜひご覧下さい。前半をまだご覧頂いていない場合は、下記からご覧下さい。

小田急鉄道に勤める高橋さんのお客様やお仕事への思い

小田急鉄道に入って大変だったこと

高橋啓一さんご本人

横關昌弘さん(以下横關さん):選択肢が狭まって来ると、不安もあった中で新しい道をお選びになって凄いと思います。小田急に新卒で入って、ざっくりとで良いので、印象に残っていることや仕事をしていて大変だったことってありますか?

高橋啓一さん(以下高橋さん)大変なことって、たくさんあるんですけど、鉄道会社って公共性が高いというところで動いて当たり前。特に日本だと時間通りに走ってて当たり前というところで、時間に対して厳しさとか。私は運転採用なので、試験はありますが、後々乗務員には配属予定でその中で駅の業務、研修はあるのですが、駅って営業関係で本当にやることが多いんですよ。例えば駅のホームに立ってアナウンスしたり、お客様と直に対面して清算したり、券売機の締め切り作業だったり、多岐にわたる仕事を基本的には1ヶ月以内に覚えないといけないので、最初は本当に毎日あたふたしてました。その中でトラブルも起きます。大半の方が普通の人ですが、変わった方もいらっしゃるので、経験も大事だなと思いましたね。4月から研修で5月から駅に配属されて、そこから5か月ぐらい駅にいたんですかね。車掌の登用試験があるんですよね。その勉強をして受かったので、車掌になりました。車掌を養成する施設が会社にあるんですね。そこで1ヶ月学科の勉強をします。受かれば次は現場に出ます。マンツーマンで主任車掌と一緒に現場の仕事を覚えます。こちらも1ヶ月で現場の仕事を覚えて独り立ちするための単独試験を行うんですね。受かったら独り立ち出来るという流れです。車掌も2年間やりました。

横關さん:学科の試験は国家試験なんですか、それとも社内の試験という形なんですか?

高橋さん:車掌試験に関しては社内試験ですね。会社によってもしかしたら違う内容もあるかもしれませんが、運転士自体は国家資格ですね。車掌自体は経験をしていれば、運転士の試験は受けられます。1年目は落ちちゃって、言い訳なのですが、車掌の仕事が楽しかったんですよね。自分がドアを閉めてアナウンスをして運転士に合図を送って電車が動いていく。仕事の充実感というものがあって、楽しくてこのまま車掌でも良いかなと思ったんですが、俺、運転士になるために入ったんだよなと思いまして2年目は勉強して受かったので、国から認可されている会社の養成所がありまして、学校みたいな感じですよね。そこに4か月間通って、10科目以上あるんですよ。

横關さん:その養成所の機関はほかの業務は全く行わないで勉強に集中するんですか?

高橋さん:そうです。毎日、座学でたまに実際に電車の床下に機器がたくさん付いているの分かりますかね?あれを見に行ったり、電車がばらしてあるのを見に行ったりして、実際に電車ってこうやって動くんだよというのを勉強します。

横關さん:海老名に施設ありますよね?

高橋さん:はい、車両基地がありますし、新しく出来たロマンスカーミュージアムもありますね。

横關さん:そのあと、無事試験に受かって、運転士さんになられたと。

高橋さん:4か月間は学科で、国家試験なので、まずこれをクリアしないと現場に出られないんですよ。現場に出たら今度は主任運転士とマンツーマンで4か月半ずっと一緒に乗ります。これが一番大変でしたね。電車って動いたら止まらないので、どんどん時間が過ぎていくのでもたもた出来ません。その中でもいろいろなことを覚えないといけません。
小田急は全部で70駅あるんですけど、全部の駅の最高速度、違うんですよ。上りも下りも速度が違います。勾配や曲線、転轍機を渡るときの速度も違います。転轍機も数種類あったりして、それも全部覚えないといけないので。また、時間帯での運転の仕方を変えたりと、様々なことを覚えないといけません。
色々なことを考えながら、計算しながら4か月半先生と一緒に運転して、その後に単独試験を受けて、受かると初めて免許がもらえます。ほぼ1年近くかかりながら運転士の資格を得るんですね。この頃は人生で一番勉強しましたね。ストレスで病気になったりもしました。

横關さん:秒単位のお仕事なのでプレッシャーも重いですものね。

高橋さん:そうですね。自分のミス一つで多いときは電車に3千人近く乗っていてご迷惑をおかけしますし、大きな遅延になると何万人の方にご迷惑をおかけしてしまうことになります。その辺りのプレッシャーは今でも変わらないですかね。

横關さん:その生活が10年ぐらいですか。

高橋さん:そうですね、運転士になって11月で10年目ですね。主任になるのは本当に難しくて去年は2.5%ぐらいしかなかったですね。

平賀さん:ロマンスカーは試験とかあるの?

高橋さん:うちにはロマンスカーという特急があって、これは選抜試験なんですね。運転士になって3年間の経験と1年間の無事故でロマンスカーの運転試験が受けられます。受かって、今、ロマンスカーにも乗っています。今制度が複雑になりまして、その辺りは割愛させて頂きますが、2年の任期で現在資格を頂いて乗っております。運転士って運転するだけが仕事だと思ったらそうでしゃなく、やることが多岐にわたります。運転中は何も出来ませんが、接客の場面も多いですね。折り返しなどで、お子様が手を振っているとこちらも振ります。小田急入ってびっくりしたのは線路沿いの道路で歩いている子たちが手を振っているんですよね。こちらも出来ることは対応したりします。その中で仕事の充実感はありますね。

横關さん:ロマンスカーのお話が出たんですが、運転席までははしごを上るのは本当ですか?

高橋さん:うちは特急の車形、種類が多いので、運転台が2階にあるものもあります。その場合は、はしごを上って上で運転します。景色が全然違うので、かなりの高さで架線の近くまでいきますね。

横關さん:ロマンスカーの運転士になると、ほかの通常の電車は乗らないようになるんですか?

高橋さん:1日の航路が決まっていて、全部運転しますね。

平賀さん:全部運転するんだ!

高橋さん:そうそう。

横關さん:登山のほうも行くんでしたっけ?

高橋さん:箱根湯本から、先は箱根登山鉄道に乗り入れをしています。登山も行きます。特急と一般車でも行きます。

高橋さんがお仕事で大切にしていること 何も無いのが一番

画像はイメージです

横關さん:お仕事の話もお聞きしているんですが、先ほども一秒単位ということをお聞きしたんですが、自分の中で大事にしていることってありますか?

高橋さん:10年近くやっていて思うのが、何も無いのが一番です。は?って思われるかもしれないですが、これが一番です。

横關さん:本当にそうだと思います。

高橋さん:何もない。自分もミスをしない。お客様に怪我をさせない。最悪遅れはしょうがないときもありますが、時間は仕方が無いので、安全を第一にするということです。会社も私もその認識でおります。乗る側の立場からするとこんなことで起きてしまうのか?という事故もあるので、とにかく安全にいくことを心掛けております。自分のプライドとしては安全を第一にして、時間に遅れていたら少しでも戻すということは意識しております。
運転士は1日に色々な電車を何本も担当します。同じ車型でも車号でも癖が違うのでその中でもうまく運転していくことが求められます。

平賀祐芽さん(以下平賀さん)私が聞いていて仕事大変だなと思ったのは、アルコールには気を遣うよね?高橋君、就職してからすごいお酒に気を遣うようになったなと思って。

高橋さん:アルコールね。出勤時に毎回アルコール検査をしないといけないので。会社から何時間前に飲んではいけないという規則は無く自己管理なのですが、自分の場合は次の日に仕事がある場合は、12時間以上空けるようにはしています。当たり前なのですが、アルコールの検査で引っかかると電車には乗れません、飲酒運転なので。乗れないということは、誰かが代わりに乗らないといけないので、仲間に迷惑がかかるんですね。手配する事務所の人だったり、本来帰るはずの人が乗る部分出て来てしまうので、社会人として当たり前なのですが、気を付けています。

平賀さん:普通のアルコール検査よりも厳しいんだっけ?

高橋さん:もっと厳しいもので検査するね。

横關さん:一つ一つのお話から高橋さんの運転士としてのプライドを見られました。インフラに関わる会社は動いていて当たり前という業界なので、止めることは出来ない。それだけ大変な部分もあり、インフラに関わるお一人お一人がいらっしゃって、高橋さんもその中のお一人なので、素晴らしいお仕事だなと思います。
次の質問なのですが、運転士の方が指差し確認などをしているのはお見掛けします。私の友人が鉄道関係で働いていて、指差し確認などをしているのですが、日常生活でも普段の仕事の癖などが出てしまうときってなにかありますか?

高橋さん:さすがに指差し確認はしないかもしれないですね。ただ、運転士の見習い期間のとき、車を運転していて赤信号に止まっていたとき、青信号になったとき「進行!」って言っちゃいましたね(笑)自分で我に返ったとき恥ずかしかったです。

横關さん:鉄道を使用するお客様に何か、お願いなどありましたら、よろしくお願いします。

高橋さん:お願いですか。そうですね。物騒な事件も多く、どんな人が乗っているか分からないのが電車なので何かあったときは、まず乗務員に教えて欲しいですね。車内警報ブザーがあるので。ただ、まずは逃げて頂きたいですね。可能であれば状況をお知らせ頂ければと思います。そこで初めて私たちは判断が出来ますので。

平賀さん:ボタン押すと、車掌さんと運転士さん、どちらにも連絡がいくの?

高橋さん:うん、どちらにも連絡がいくね。どこの車両で押されたかも分かる。ただ、車内の状況は分からないので、出来れば車内の状況を教えて頂けるのは助かります。でもまずは密室なので難しいですが、自分の身の安全の確保を第一にして頂きたいですね。

横關さん:私はまだ押したことが無いんですが、車内で暴れている人などがいて、周りの人間に支障をきたすレベルならボタンを押して、車掌さんや運転士さんにお知らせすることが大事だと分かりました。病人の人だと、「それぐらいで」と言う人もいるかもしれませんが、公共の施設なので協力したいなと感じました。

高橋さん:そうですね。難しいこともあるかもしれませんが、出来れば協力して頂けるとありがたいです。
最後に一つだけお伝えしたのは「駆け込み乗車はおやめ下さい」ということですかね。車掌をやっているときに、何度かお見掛けしたことはあるんですが、駆け込んで滑ってヘッドスライディングになってしまったお客様がいらっしゃいます。危ないというのもありますが、ドアって駆け込むとドアってバッと開いたりするじゃないですか?あれだけで、開けて、安全確認をして、閉めます、というだけで何秒も経ってしまうんですよね。一駅だけなら少しの問題ですが、10駅、20駅にになってくると、何分も遅れが出てしまうんですね。電車の定時運行にも関わって来ます。第一に怪我をして欲しくないという思いがあります。ただ、自分一人なら大丈夫と思われるかもしれませんが、それがお一人、お二人、何十人となってしまうと、ほかのお客様が定時に着かなくなってしまうだけではなく、大きな遅延に繋がるという問題が発生してしまうので、定時運行と安全運行ため、駆け込み乗車はおやめください。ご協力頂けるとありがたいです。よろしくお願いいたします。

横關さん:我々の年代って後輩も増えて来る年代じゃないですか?鉄道会社に就職される方って、私の友人もそうなんですが、子供の頃から鉄道が好きでという方が多い印象を受けます。高橋さんも子供のときに、新幹線の運転士という夢があったように今の若い世代も鉄道が本当に好きという方が会社に就職するものでしょうか?

高橋さん:そうですね。半々ぐらいだと思います。電車が元々好きでという方もいますし、私も含めて何でこの会社にしたんだろうという方もいます。乗務員は鉄道オタクだと思われるかもしれませんが、全然そんなことも無く、仕事の種類が運転士という方もおります。好きな方は本当に好きで鉄道の話題が尽きない方もいらっしゃいますね。

平賀さん:高橋君は、お父さんが鉄道会社で仕事してたけど、入社してから想像と違ったことって無かったの?

高橋さん:父親は仕事の話ってあんまり家でしたこと無かったから、自分が運転士になってから父親が仕事の話をしたので、今まで考えたこと無かったかもしれない。

学生さんへの就活へのアドバイス

横關さん:最後なんですが、今の学生さんが今後高橋さんの会社だったり、ほかの企業に勤めるに当たって、なにかアドバイスなどあればよろしくお願いします。

高橋さん:そうですね。時代が私たちのときと違うので、アドバイスというのは難しいんですが、車掌のときに目白大学から就活体験談を話して欲しいと言われて話に行ったことがありました。うちも以前より採用が減っているんですね、人が乗らなくなってしまったので。

平賀さん:コロナの影響があるんだね。

高橋さん:いやあ、大変なんだよ。

横關さん:テレワークとかでも乗る人少なくなったんですかね。

高橋さん:朝もそうなんですが、外国人旅行客もいらっしゃらなくなったので。特にロマンスカーで箱根に行く中国人の旅行客が大勢いらっしゃいましたが、今はほとんどいないですね。採用も減っているので鉄道会社に入るのって難しいと思うんですけど、私も普通の学生からまさか小田急に入ると思っていなかったので。当時、大事にしていたのは、志望動機ですね。「会社に入ったら私は〇〇します」とか具体的に入社後のイメージを明確にする、それを話していたのが当時、就活が上手くいったのかなと感じています。
今、大変な時代ですけど、将来が明るくなるように今しかないので頑張って頂きたいなと思います。頑張っていれば良いこともあると思いますし、私も大学の後輩は欲しいですね。

高橋さん、平賀さん、横關さん、ありがとうございました!
高橋さんはインフラに関わるお仕事をされていて、いつもプレッシャーを感じながら誰かの当たり前の日常を守って下さっているのは本当にありがたいなと思いました。ぜひ、小田急鉄道を目指す在学生の方が出て来てくれたら嬉しいです。